腱鞘炎のケアは「手+全身」が理想
ページ内の目次へバーデン結節には「脳の緊張緩和」も必要
ページ内の目次腱鞘炎の原因って何?
腱鞘炎は名前のとおり、腱鞘が炎症をおこしておきる症状です。
指を曲げたり伸ばしたりするときに、筋肉が腱を引っ張ることで動かしているのですが、腱が周りの組織とこすれあわないように、ストローのような筒状・あるいは輪状のさやの中を通って「行ったり来たり」しています。
普通ならスムーズに「行ったり来たり」できるのですが、さやが炎症を起こすと通り道が狭くなるので、指を動かすときに痛みがでてくるようになります。
なぜ炎症をおこすのかというと、何らかの理由で腱が太くなり、腱と腱鞘がこすれ合うためだと言われています。
しかし、なぜ太くなるのかについては、はっきりとは分かっていません。
「手を酷使したから」とか「ホルモンの問題」などと言われています。
当整骨院でもいろいろな方法で腱鞘炎の原因を探ってきました。
それでも原因がなにか、一言でいうことは難しいように思われます。
それがなぜかというと、これさえすれば必ず良くなる、という方法がないからです。
とは言っても、腱鞘炎を改善させていくときにアプローチすべきところは決まっています。
- 指・手・手首・肘の関節
-
指や手にはたくさんの関節があります。
それらの関節の動きが悪くなると、筋肉や腱に本来よりも大きな負担がかかり、炎症をおこしやすくなります。
ですから、関節の不調は腱鞘炎の直接の原因になります。
- 背骨
背骨の状態は腕全体の筋肉や内臓に大きな影響を持っています。
腱鞘炎の直接的な原因にはならないかもしれませんが、間接的な要因になると思われます。
- 内臓
-
内臓は指と直接的な関係を持っています。
例えばもっとも腱鞘炎のおこりやすい親指には、肺のエネルギーが流れています。
何らかの理由で肺か、あるいは肺と関係の深い横隔膜などが不調になれば親指を痛めやすくなります。
- 頭蓋骨
-
当たり前のことですが、体のどんなささいな問題も脳は把握していますし、その情報は頭蓋骨にも反映されると考えられています。
ですから頭蓋骨を詳しく調べて、頭蓋骨に起きている不調はすべてケアしたほうがいいのです。
また、痛みのために脳が緊張していることが症状の改善を妨げることもあります。
- 手の骨
-
骨自体に生じる障害については、骨折くらいしか想定していないのが普通の医療です。
でも実際にはそうではないことが、オステオパシーアプローチのメカニカル・リンクでは明らかになっています。
それは、骨が弾力を失って「硬くなりすぎる」障害です。
骨が硬くなりすぎると、関節に過剰な負担がかかり、関節が不調になる原因になります。
この問題はメカニカル・リンクを学んだ施術者にしか把握できません。
- 手の筋肉
手の筋肉が過剰に緊張することが腱鞘炎を引き起こすことはまず間違いありません。
ただ、「どうして緊張しすぎるのか?」についてはいろいろな理由があるようです。
たとえば楽器を弾き始めたころ、まだ筋肉が慣れていない段階で練習しすぎれば筋肉はとても硬くなります。
また臓器の疲れとの関係で硬くなることもあります。
さらには、かつての捻挫などケガの後遺症で関節に不具合があっても緊張が強くなります。
ですから、「どうして筋肉が緊張しすぎるのか?」という疑問を明らかにすることが必要です。
その疑問の答えはすなわち、腱鞘炎になった理由とも言えるでしょう。
上記の問題すべてをケアしていくことができれば、とても高い確率で腱鞘炎を改善させていくことができます。
腱鞘炎の原因としては、これらの要素全部のかね合わせではないかと思われます。
改善させにくい腱鞘炎について
仕事でハードに手を使って痛みが出てきた場合、治りにくいと思われるかもしれません。
ですが実際にはそうでもありません。
いわゆる「使いすぎ」による痛みは、上手く筋肉の緊張をとり、少し骨の調整をすればそれだけでほぼ解決できます。
逆にそれほど手先を使っていないのに痛みが出てきたと言う場合は、筋肉の緊張や骨の動き以外の要素も考慮に入れる必要があります。
つまり治しにくいケースがよくみられます。
例えば、妊婦さんがなる腱鞘炎がこれにあたります。
妊婦さんはそれほど家事をしすぎることもないと思われますが、時に重症の腱鞘炎になることがあります。
この場合、全身的なむくみが見られることがあります。
また、胎児の重さにより、背中の筋肉の緊張は強くなっています。
妊婦さんのケースでは、腱鞘炎の発症部位だけに注目していても大きな成果は得られにくいでしょう。
体調をホルモンバランスの視点から、あるいは臓器のバランスも含めて考えてみる必要があります。
実際には妊婦さんだけでなく、授乳中・育児中の腱鞘炎もこれに近いのではないかと思われます。
妊娠での腎臓の疲労も残っていますし、出産後は夜中に何度も起きることで腎臓に負担がかかり、育児での疲労やストレスで、いろいろな関節に痛みがでやすい状況になります。
他には、筋力がとても弱い人の場合、ちょっとした動作の繰り返しで発症してしまった腱鞘炎が、手を使わないようにしていてもなかなか治らないケースがあります。
このタイプも全身的なバランスを考慮する必要があると考えられます。
筋肉の緊張をとるだけでなく、バランスをとる必要があるというケースでは、緩みすぎている筋肉の緊張を上げる対応をします。
腱鞘炎とも関係が深く、腱鞘炎より解決が難しい症状に「ばね指」があります。
ばね指についてはこちら
改善させにくい部位
一般的には親指の腱鞘炎が治りにくいと考えられています。(ド・ケルバンタイプ)
親指の動きが他の指より複雑で、筋力も大きいためだと考えられます。
しかし、うまく骨格の調整ができる場合は、どの部位もそれほど変わりありません。
ただ、体調が悪い場合に肺の元気の足りなさから呼吸が浅いことが多く、肺が元気になるまで親指の腱鞘炎が改善しにくい傾向があります。
腱鞘炎の予防法・対処法
腱鞘炎の予防や痛くなった場合の対処として、「使わないようにしてください」と言われる場合が多いのではないでしょうか。
確かにそれが最も確実な予防・対処だと思われます。しかし、実際にはそんな対処は不可能です。家事や仕事は待ってくれません。
そこで、別の方法を考えなくてはいけません。
予防法・対処法 1.使っていない筋肉を鍛える
手首や指にはいろいろな動きに対応するため、たくさんの筋肉がついています。
しかし、普段力を入れる筋肉はごく限られています。
ですから、普段あまり使っていない筋肉をあえて鍛えることが、手の筋肉のバランスをとることにつながります。
日常であまりすることのない手や指の動きは
- 指を伸ばしたまま手首をそらす動き
- 手をパーにして指をできるだけ横に大きく開く動き
- 手をパーにして手首から先を車のワイパーのような動きでよこに反復する動き
などです。
いつも使っていない筋肉を使うことは、よく使う筋肉をゆるめる効果があります。
ただ、普段あまり使っていない筋肉を急に使いすぎると逆に痛めてしまうこともあるので、鍛えるのは徐々にやっていくようにしましょう。
予防法・対処法 2.背筋を伸ばす
腱鞘炎の発症には背中の筋肉のこりが関わっています。
ですから、作業をするときにできるだけ良い姿勢で取り組むことが予防につながると思われます。
たとえばかがんだ姿勢をとるとき、猫背にならないよう意識的に胸をはるようにします。
実際にやってみるとわかりますが、腰の負担も激減しますし、背中は疲れますが腱鞘炎につながるようなこりはおきません。
背中のこりは、内臓が疲れているときにも起こりやすくなるので、食べ過ぎや睡眠不足を改善することも予防になるでしょう。
予防法・対処法 3.手のストレッチをする
手を使う前後にストレッチをしましょう。
ストレッチをいつもやっていると筋肉の調子がよく分かるようになります。
特に緊張が強いときに丁寧にストレッチするようにすれば、発症をおさえる大きな力になります。
効果の高いストレッチは次のとおりです。- 肘を曲げた状態で、できるかぎり大きく後ろに引く(空手の拳を突き出す前の格好)
- 肘の位置を変えないようにしながら、肘を完全にの伸ばす
- すると、腕の内側の筋肉が引き延ばされ、ストレッチされます
他には、指と指の間(股)に、もう一方の手で作ったグーをむりやり根元まで押し込み、横に広げるストレッチが効果的です。
また、みなさんがよく知っている、手首をそらすストレッチももちろん効果があります。予防法・対処法 4.腱鞘炎バンドを利用する
腱鞘炎バンドを活用してみましょう。
腱鞘炎バンドを使うときのこつは、ときどきはめる位置をずらしていくことです。意外な位置で楽になることもあるかもしれません。
腱鞘炎バンドが効くかどうか買う前に試したい場合は、伸縮性のないテーピングを買って、肘周辺や手首周辺などに巻いてみましょう。
当整骨院の腱鞘炎への施術
腱鞘炎への対処では、腕や手の筋肉に対してのマッサージを行うのが標準的な施術です。
しかしそれだけでは回復に長期を要したり、ほとんど効果を出せない場合もあります。
もっとも大切なことは、腱鞘や腱にかかっている過剰な負担を減らすために
「うまく動いていない手や腕の骨をスムーズに動くようにする」
ことです。
関節が硬くなって動きにくくなっていると、ごく普通に動かすだけでも筋肉や腱にとても大きな負荷がかかります。
筋肉や腱にアプローチしてもなかなか改善していかないのは、関節の問題が残っている限り筋肉や腱の負担が大きいままで、炎症が起きやすい状況が変わっていないからです。
ですからまず、その負担を楽にしてあげなくてはいけません。
そのためには、どの骨・関節の動きが悪いのかを調べる必要がありますが、骨が小さく複雑な手首においては、それは意外なほど難しいことです。
腱鞘炎を苦手にしている院が多いのはこれが理由になっています。
手の構造は図のとおりです。
手首から指の間に小さな骨がたくさんあることが分かります。
これらの小さな骨の動きだけが悪い場合もありますし、この図では途中までしか描かれていませんが、橈骨や尺骨の動きの悪さが小さな骨の動きの悪さを作り出している場合もあります。
どの骨の動きが悪いかだけではなく、動きの悪さがどこから始まっているのかも考慮する必要があります。
そういった訳で骨だけでもなかなかケアが大変なのですが、他にも治しきることが難しい理由が腱鞘炎にはあります。
それは
- 指の臓器との関わり
- 指への背骨の状態の影響
です。
たとえば親指の場合、関係している臓器は肺(東洋医学的知見)なので、肺や横隔膜に何らかの不調があると親指に流れていっているエネルギーの流れが滞ります。
もっとも多く見られるのは、胃腸の不調から横隔膜の緊張が引き起こされて親指に痛みが出ているケースです。
手の指とまったく関係がないと思われがちな「足の胃のつぼ」にお灸をするだけで、その場で痛みが激減することもあります。
イラストレーターやピアニスト、料理人、主婦が指を使いすぎるから痛めているということだけでなく、指のそういった基礎的な状況が悪くなっていることが発症の一つの要因です。
ですから、臓器のケアを通して指が改善していきやすい状況を整えることが理想的です。
また背骨の状態はどんな症状にも大きな影響をもっているので、背骨へのアプローチも不可欠です。
腱鞘炎の改善のためには、こういった要素を総合的にケアしていくことになります。
痛みがあっても炎症が強くない場合なら、とても早い回復が得られます。
炎症が強い場合でも、施術するたびに着実な回復が実感できます。
病院やクリニックの腱鞘炎への対応
病院やクリニックでは、整骨院とは違う対処がなされています。
まず最初に
「レントゲン」などの画像診断で、手に大きな問題が生じていないかを確認することが多いようです。
画像診断は整骨院ではできないので、症状がひどい場合は一度見てもらうことが大切です。
画像診断で問題がなければ、
- 手をできるだけ使わないで休める
- シップ
- 炎症を止めるための注射
などの処置で、保存的に経過をみることが一般的です。
注射についてはかなり痛いこともあるようなので、痛みに強い人向けの治療かもしれません。
その後、経過が思わしくない場合で、症状がかなり強いときには
- 腱の通り道を広げるための腱鞘の切開
などの手術が行われることもあるようです。
病院やクリニックでの対処についてはドクターズ Meを参照してください。
困った症状「ばね指」
腱鞘炎と関係の深い症状に「ばね指」があります。
手をグーからパーに開いていくときに指がひっかかり、力を入れると「ポンッ」とのびる症状です。
ばね指の場合は、痛い人と痛くない人の両方がおられます。
腱鞘に炎症があるかどうかで痛みのあるなしが変わると考えられます。
ばね指の原因
腱鞘と腱の関係は、ストロー状、あるいは輪状のさやと中を通る糸の関係という話は腱鞘炎の原因のところで書いたとおりです。
ばね指の場合はさやを通り抜けしにくい程度まで腱が太くなってしまったことから起きている症状です。
スムーズに通り抜けられないので、力を入れて「無理やり」押し通さなければいけない状態です。
特にグーを強い力でやった後にひっかかりが強くなる傾向があり、このことから腱を引っ張る筋肉の
- 過剰な負担
- もしくは不調
がうかがわれます。
過剰な負担というのは、骨格・関節の不具合で指がスムーズに動かせないことから生じます。
もう一つの不調というのは、筋肉のはたらくメカニズムと関係があります。
筋肉というのは、反対の作用の筋肉同士が協調して働いています。
指の場合は曲げる筋肉と伸ばす筋肉が協調していていて、指を曲げるときに筋肉の緊張が強くなり過ぎないように、伸ばす筋肉がうまく働いています。
ところが伸ばす筋肉の働きが悪いと、曲げる筋肉が緊張しすぎ、痛みや炎症、腱が太くなる、こぶになるなどが起きると考えられます。
こうしてばね指が発症します。
ばね指への当整骨院の対処
ばね指も原因は腱鞘炎とそれほど変わらないことから、対処も腱鞘炎と変わりません。
ただ、腱が太くなっている、あるいはこぶになっていることに対して、早期改善のために対策が必要な場合もあります。
対策というのは、指を伸ばす筋肉を鍛えることです。
指を伸ばす筋肉をトレーニングしていく際には、腱を刺激しないように注意しながら行うことが大切です。
ばね指のときだけ使うトレーニング方法を指導しています。